Story
あらすじ

都内郊外のキャスティング会社で働く男・佐田紀夫、30歳。
彼は交際三年目になる恋人・田辺茉莉と、穏やかな毎日を送っていた。
ある夏の日。紀夫が家に帰ると、窓から強い夕陽が差し込んでいた。焦げるようなその日差しを目にした瞬間、紀夫は奇妙な感覚に襲われる。気付くとそこにあるはずの茉莉の姿は無く、代わりに見知らぬ若い女がいた。
困惑する紀夫に、女はここに住むために来た、と無茶苦茶なことを言う。
透き通るような白い肌のその女は「マリ」と名乗り─
突然失踪した恋人を探しながら、別人との奇妙な関係に迷い込んだ男を描く、
奇妙さと写実性を両立した恋愛劇。
comment
応援コメント
歪んだ空気に酔ってしまったかのような緻密さを持つ映像。不可解なムードが支配する日常の映画。カフカか、安部公房か、頭をよぎる。
行定勲/映画監督
絵に描いたような?カップルの描写で始まり、そこからまったく絵に描いたことのない展開に引き込まれ。「おいおい」「え」「待って待って」と、ずっっと心が騒がしかった。なのに所々、静かに共感もさせられ。忙しい。Bバリ観たほうがいい K感想としては Bベタですが!
バイク川崎バイク/お笑い芸人
他愛のない日常にぽっかりと穴が開く。それを埋めるには同じものでなければいけないと思っていた。 でも、そうじゃないのかもしれない。 茉莉、マリ。どっちのまり?
小谷実由/モデル
いつのまにか代替可能になっている恋人。 くり返される不穏なシーン。 過ぎて行く日々の中に潜む落とし穴が執拗に描かれる。 それが恐怖体験ではなく日常なのだ、と知ったとき、 この映画の本当の怖さが背筋に来た。
窪美澄/ 小説家
なかなかに不安な気持ちにさせられるので、この映画とは一対一の関係になりたくないです。映画館で、他の観客と一緒に対峙した方がいいと思います。そんでもってみんなで一緒に取り込まれていく疑似体験を…。
福原充則/脚本家・演出家
延々と続く白昼悪夢のような夏の現実。じれったく、もどかしく存在する人々。気になる気になる。淡々としていながら、強力な磁力を持った映像とストーリーと音楽。山西くんの頭の中のイメージをそのまま見せてもらってるかのような密度で、映画が始まってから終わりまで夢中になってしまいました!
かもめんたる 岩崎う大/お笑い芸人・劇作家
70年代の映画を観てるようでした。穏やかなふりをして、1フレも目を離せない。日常のようで、狂気と恐怖がッ。ライティングも撮影も殺気立っていて完璧!細やかなキャスティングも、そこにいるすべての人物がちゃんとそこにいて、妙でした。妙で大好き。一番好きなカットは、アシスタントの子の目のヨリ!大好き!
長久允/映画監督
この映画を観終わって席を立とうとする時、自分がそこへ座る前から"隣の席"は用意されていたということにハッとするでしょう。 『彼女来来』は、唯一無二であることへのロマンを容赦なく揺さぶり続け、その冷徹な目線を携えて愛の脆さを暴き出す。
工藤梨穂/映画監督
取り替えがきくはずのない存在が、不条理にも取り替わってしまった時に感じるであろう恐怖と困惑を、冷静に丹念に捉えた本作は、私たちに“しあわせ”の意味を問う。 他者の深淵なる心にそっと踏み入れた山西竜矢監督の勇気に喝采を送りたい。
堀江貴大/映画監督
明日は今日と同じ日ではないが、それでも今日と似ている、となぜか僕らは信じ、今夜目の前で眠る彼女が明日も傍らで眠りに就くことを当然視する。だけど、それは本当なのか?僕らの「習慣」の強固さと無根拠さを鮮やかに暴露する快作!
北小路隆志/映画批評家
かけがえのない存在の輪郭とはなんだろう。 私たちは何を手がかりに、当たり前を認識しているのだろう。 大切なものが入れ替わったとき、時の流れとともに周囲も変わっていったとき、 私だけは変わらずにいられるだろうか。 もしも変わってしまった私に差し向けられるのは、祝福だろうか、軽蔑だろうか。
佐々木ののか/文筆家
彼女がある日別人に。日常が丁寧に描かれるほど、そのぐらつきや不安感は大きい。 暗がりの顔、彼女の顔、新人の顔、知らない人の顔。顔、顔、顔に埋もれ、 もはや顔なんて情報はどうでも良くなって、そうしてあとに残る、人の本質ってなんだろう。 自分だけに想像させてくれる余白が心地よく、気味悪く、つまりとっても面白かったです。
豊田エリー/俳優
完璧、という言葉が口を衝いて出てしまう。「設計の美」が横溢する不条理ドラマの傑作。アントニオーニの『情事』を彷彿させる謎の残し方や、アニエス・ヴァルダの『幸福』に通じる皮肉。前原滉や天野はなの「キャラが定まらない顔」すらも、監督・山西竜矢が引いた図面の中に綿密に組み込まれているようだ。
森直人/映画評論家
人間、好きな人に対して理由もなく突然「え、誰?」と全くの赤の他人に見える瞬間がある。 あの名前のない不気味な感覚に襲われる91分。 自分が狂っているのか、世界が狂っているのか。穏やかな毎日が不条理に飲み込まれていく。 今、断トツに恐ろしい"恋愛"映画。
Kisssh-Kissssssh映画祭実行委員会
そうなのだ。こうした文学的でもあり映像的でもある不条理こそが、僕を魅了しつづけているのだ、今まで。果てしなくループされる弦楽が不快感と快感を増殖させ、次第にクレッシェンドしていくのも泥沼にずぶずぶずぶ。
ミルクマン斉藤/映画評論家
別れはいつも「さよなら」を告げずにやってきます。 相手に問いかける時間を奪われてしまった別れは彷徨い続け、新しい誰かをひき寄せてしまうのかもしれません。茉莉とマリ、「さよなら」と「こんにちわ」が混在する永い会話のような映画。
山本英/映画監督
あの人と同じ言葉を吐いたこの人も同じようにして私のもとを去るのだろうかなんていつかの捻くれた心が顔を出してきた。不条理のカーテンを引いて突きつけて来る諸行無常に、ストンと納得してしまう。映画が終わり街を行き交う人達の、マスクをつけた横顔に目眩がしてくるけれど、結局この二つの目で明日も明後日も人と生きていくしかないのだと諦めがつく。めちゃくちゃに面白かったです!
根矢涼香/俳優
マリとの幸せな生活だって、リアリティなんかなかったのかもしれない。観客よりも少し後で、主人公は気づく。やってきた別のマリ。いいじゃん、こっちのマリだって。私は思う。いいわけあるかよ。なんだよこいつ。奇妙だよ。本当にそう思う? え、思うよな? なんだよマリ返せよ。いいね、映画で撮られる顔してる。
Aマッソ加納/お笑い芸人